ピース・メディエーションにおける日本のプレゼンス
──現時点で、イスラエル・パレスチナ問題に関して秘密裏に動いている日本のNGO団体はあるのですか。
堀場:人道支援という枠の中で、イスラエル人とパレスチナ人の一般市民レベルでの対話推進活動をしている団体はありますが、トラック1も含めた公式な対話の推進を行っている日本の団体はないと思います。
また、ガザに関しては、まだ平和構築的な要素を入れた支援は行われていないと思います。今は、緊急支援が求められています。そこでも、日本のNGO団体が直接現地に行くことはほとんどないと思います。
──ピース・メディエーションの分野で、世界的に見て日本はどの程度プレゼンスがあるのでしょうか。
堀場:残念なことに、ほとんどありません。
和平対話を実現させるための環境整備をする団体には、ネットワークが求められます。紛争には、いろいろな要因があります。何か良い動きがあった時に、邪魔をするような人もいます。そういった人が出ないよう、ありとあらゆるレイヤーの人、団体とネットワークを構築しておかなければいけません。非常に時間のかかる作業です。
そういった作業は、民間団体の仕事です。民間団体がネットワークづくりをし、トラック1での交渉も円滑に進めるようにお膳立てをして初めて、各国の政府が公式に和平対話のサポートに参加する。
ヨーロッパの民間団体と政府は、この手法で連携して動くのが上手い。外務省の中に、ピース・メディエーション専門の部署を設置している国もあります。
また、世界で和平対話のための環境構築を行っているNGOが加入する「Mediation Support Network(MSN)」というネットワークがあります。私が働いている笹川平和財団も、タイ深南部での活動を認められて加入しました。日本の団体では初めてです。
日本にも平和構築活動を行っているNGO団体はいくつかあります。ただ、一般市民レベルでの対話のサポートが主です。トラック1に絡むような活動をしているのは、ほとんどいないと思います。
政治的な要素が強いため、難しいと思われているのでしょう。
──ピース・メディエーションの分野に日本のNGOが積極的に入っていけない理由は、ほかにどのようなことが考えられますか。