最近、店舗で買い物をする機会がめっきり少なくなったという人も多いだろう。スマートフォンを使えば、日用品から衣類、食品、家具だって買える時代だ。都市部では、注文した翌日に商品が手元に届くことも、もはや当たり前となりつつある。
このような利便性の高い物流サービスを提供するため、1990年代後半からさまざまな企業が創意工夫し、切磋琢磨してきた。そして、そのサービスは現在進行形で進化を続けている。
物流サービスはいかにして発展してきたのか、将来的にわれわれはどのようなサービスを享受できるのか──。『最先端の物流戦略』(PHP研究所)を上梓した角井亮一氏(株式会社イー・ロジット取締役社長)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──ヨドバシカメラは、アマゾンが日本市場に上陸する4カ月前の1998年7月にECサービス「Yodobashi.co.jp(現在のヨドバシ・ドット・コム)」を開始しました。EC黎明期にヨドバシはなぜいち早く、ECサービスに目をつけたのでしょうか。
角井亮一氏(以下、角井):当時、ヨドバシカメラの副社長を務めていた藤沢和則氏(現代表取締役社長)自身が、ITスキルの高い方だと聞いたことがあります。そういったこともあり、早い段階からECの潜在的な価値に気が付いていたのだと思います。
──1990年代後半は、ECと実店舗の相性が悪いと考えられていたそうですが、その理由としてどのようなことが挙げられますか。
角井:ECと実店舗が、社内で競合関係にあったためです。
ECで売れたら、店舗でモノが売れなくなります。店舗スタッフからすると、売り上げ成績が落ちることになる。一方で、EC担当者も売り上げ目標があれば、ECではなく店舗からモノが売れることは喜ばしくない。
ECと実店舗、それぞれの売り上げ目標を別個に設定してしまうと、どうしても両社は社内でいがみ合う関係になってしまうのです。
──実店舗とECの相性の悪さを、ヨドバシカメラはどのようにして解決していったのでしょうか。
角井:藤沢氏にお話を伺ったときは、「チャネルレス」という言葉を使っていました。
一般的な小売業では、「店舗チャネル」と「ECチャネル」の2つの販売チャネルがあります。ECを強化するにあたり、ヨドバシカメラではこの考えを撤廃しました。
ECと店舗、どちらでモノが売れても、その販売実績を社内評価の対象としない。ECにしろ、店舗にしろ、ヨドバシカメラでモノを買ってもらうことが大切。そういう考え方を社内に浸透させたそうです。
──EC強化にあたって、ヨドバシカメラやファーストリテイリングでは、在庫管理の一元化をしました。一方で、角井さんは書籍中で、店舗や倉庫も含めた在庫管理の一元化の難易度の高さを指摘しています。