大谷翔平の寄贈グラブも「使い方が分からない」

田中:東京五輪で日本代表監督を務めた稲葉篤紀氏も「人口に対して3倍のスピードで野球離れが進んでいる」と危機感を持っています。実際、私が取材している中で「大谷翔平からグラブが学校に贈られてきたけど、使い方がわからない」という現場の声も聞きます。

 野球を楽しむには、ルールと戦術の理解が欠かせません。例えば、「点差によって、守備の定位置や、バッターをアウトにすべきか、ランナーをアウトにすべきかが変わる」といった戦術的要素は、基本的なルールを理解していないと、よく分からないでしょう。よく理解できないものを見ていても楽しくないと思います。動きが激しく分かりやすいサッカーなどの集団スポーツと比べると、そうした要素が大きいように思います。

 野球に触れる機会そのものが減ると、将来的にプロスポーツとしての野球市場も小さくなっていく可能性があります。確かに、プロ野球の球団も近年はビジネスに力を入れていて、観客動員数やグッズの売り上げは好調ですが、お金を落とすメイン層は今の40代以上が多い。その下の世代にとって、野球はすでに一部の人にしか楽しめないものになっているのです。

 野球離れを止めることは、時代の必然として難しいのではないか、と考えています。