熱心な層とライト層の二極化が顕著に
田中:今、少年野球の世界で起きているのは二極化です。つまり「ものすごく熱心に野球をやっている層」と「試合に勝たなくてもいいから楽しく野球をやらせたい層」にはっきりと分かれてきているのです。
前者の家庭は大体において、保護者が野球経験者。子どもが野球を続けている理由として親があげているのが「精神の鍛錬」「対人関係の学習」という、人格形成を期待したもの。保護者自身に「野球に育ててもらった」という体験があることから、子どもにも同じような機会を与えたい、と願っているのです。
こうした家庭は先ほどお話しした保護者にとっての3つの負担に難なく耐えられますし、多少旧態依然とした指導方法にも目をつむっているケースが多いものです。
反対に、後者の「楽しく野球をやらせたい層」は「保護者も毎週グラウンドに行かなければいけないのか」「子ども用のバットは5万円もするのか」と後から少年野球の現実に気づくことが多いのです。
熱心に野球に取り組んでいる層は、用具にもお金をかけますし、最新のトレーニング方法も熟知しています。楽しく野球をやらせたい親は、熱心な親との温度差に悩み、結局辞めてしまう、という現象も生じているのです。
──野球に対して熱心な層しか野球をやらなくなると野球人口は減りますし、保護者ではなく子どもが「一生懸命野球をやりたい」と思ったとしても、その受け皿がなくなっていくことを意味します。野球界はこうした現状に危機感を持っているのですか。