肥満症薬、2030年に15兆円市場に

 製薬大手が「痩せ薬」の開発に力を入れる背景には、旺盛な需要が期待されるためです。世界保健機関(WHO)によると、2022年には25億人の成人(18歳以上)が過体重で、うち8億9000万人が肥満だと言われています。

 成人の肥満は1990年以降、世界中で2倍以上に増え、思春期の肥満は4倍に増加していると言います。ゴールドマン・サックス・リサーチによると、世界の肥満症薬の市場規模は2030年に1000億ドル(約15兆円)と現在の16倍以上に成長する可能性があると予測しています。

 肥満による経済的な影響も懸念されています。世界肥満連盟(WOA)によると、対策を講じなければ肥満に関連する総コスト(医療や生産性)は2035年までに世界中で4兆ドル以上と世界の国内総生産(GDP)の約3%に相当すると推定しています。

 米国の投資銀行のアナリストは、米国のユナイテッド航空の乗客の平均体重が約4.5キログラム減れば、燃料費が年間8000万ドル(約120億円)の節減になるとも指摘しています。

 ノボノルディスクによると、現在日本では約1600万人が「肥満症」を抱えている一方、医師から肥満症と診断されている人はそのうちわずか約2%程度といいます。今後日本でも肥満症への治療が身近になっていくなか、関連する企業の開発競争に注目が集まっています。

【主な参考資料】
ノボノルディスクについて(ノボノルディスク)
週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬「ウゴービ皮下注」〔一般名:セマグルチド(遺伝子組み換え)〕、発売のお知らせノボノルディスク)
イーライリリー・アンド・カンパニーのあゆみ(イーライリリー)
FDA Approves Lilly's Zepbound™ (tirzepatide) for Chronic Weight Management, a Powerful New Option for the Treatment of Obesity or Overweight with Weight-Related Medical Problems(イーライ・リリー)
Obesity and overweight(WHO)
Why the anti-obesity drug market could grow to $100 billion by 2030(Goldman Sachs)