『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第6回「二人の才女」では、まひろ(紫式部)が父の藤原為時のために、左大臣家を本格的に探ることを表明。どうしても気持ちが引き寄せられる三郎(藤原道長)から離れるための決意だったが、漢詩の会で2人は居合わせることになり……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
父を驚かせた、まひろの「政治的発言」の真意
今回の放送は「変化」がテーマの一つとして挙げられるだろう。主人公のまひろ(紫式部)は、父の藤原為時から「もう左大臣家の集いには行かなくてよい」と告げられる。
まひろの心身を案じてのことだったが、まひろは「お気持ちうれしく思います」としながらも、「これからも左大臣家の集いに行きとうございます」と訴えて、理由をこう語った。
「父上のよりどころが、我が家にとっての仇である右大臣家しかないのは、私も嫌でございます。源(みなもと)とのつながりも、持っておかれたほうがよいのではないでしょうか」
右大臣は藤原道長の父で、段田安則演じる藤原兼家のこと。「我が家にとっての仇」とは、兼家の息子、道兼にまひろの母を殺されたことをいっている。「源とのつながり」というのは、益岡徹演じる左大臣の源雅信との関係性のことだ。
まひろのあまりに唐突な政治的な発言に、為時も「そのようなことを突然……」と驚いている。まひろが父の出世のことや、家の繁栄について考えているそぶりは、これまで全くなかった。それどころか、左大臣家にさぐりを入れるスパイのような役割を課せられたことに、まひろは父への失望をあらわにしたほどだ。
そんなまひろが「これからは今までよりも覚悟を持って、左大臣家の倫子様と仲良くなり、源とのつながりを深めます」とまで言うのだから、為時が「そこまで考えておったとは」と感激するのも無理はない。「倫子様」とは、源雅信の娘で、黒木華演じる源倫子(ともこ)のことをいう。
まひろが変化した理由は、三郎と離れるためだ。といっても、三郎が右大臣・藤原兼家の息子という高貴な身分だったからではない。母を殺した犯人の道兼の弟だとわかったからである。
さらにいえば、母が殺された日、幼いまひろは三郎との約束があるため、急いでいた。その結果、道兼の馬とぶつかり、母が斬られることとなった。前回の放送では、号泣しながら「あの日、私が三郎に会いたいと思わなければ……」と声を絞り出した。そんな思いもまた「三郎にもう会うべきではない」と、まひろに決心させることとなった。