大河ドラマ『光る君へ』第4回「五節の舞姫」において、本郷奏多が演じる花山天皇が、井上咲楽が演じる藤原忯子の手首を帯で結わえるシーンは、視聴者の話題を浚った。そこで今回は、花山天皇を取り上げたいと思う。
文=鷹橋 忍
生後10ヶ月で皇太子に
花山天皇は、安和元年(968)10月に生まれた。康保3年(966)生まれの藤原道長より、二歳年下である。諱は師貞という(ここでは「花山」で統一)。
父は、冷泉天皇(950~1011 在位967~969/父は村上天皇)で、花山は第一皇子である。冷泉も、奇行が伝えられる天皇だ。
母は、藤原伊尹(924~972)の娘・懐子(945~975)である。
藤原伊尹は、段田安則が演じる藤原兼家(道長の父)の長兄だ。一条第に居住していたため、「一条摂政」と呼ばれた。花山も宮中に入る前は、一条第で暮らしていたという。
安和2年(969)8月、父・冷泉は20歳(数え)で譲位し、冷泉の同母弟である(母は藤原師輔の娘・安子)守平親王が践祚(天皇の位を受け継ぐこと)し、11歳で円融天皇(959~991 在位969~984)となった。円融天皇は、ドラマでは坂東巳之助が演じている。
円融天皇の即位と同時に、冷泉の譲位詔により、花山が皇太子と定められた。花山が、生後10ヶ月のときのことである。