政治的な決着による「切り捨て」が建設の条件

 しかし、新幹線の建設が進んだいまもなお、建設コスト、維持コストの負担についての明確な解法は見つけられておらず、併せて新幹線の開通後に並行する在来線をどのような形で維持するのかという問題も生まれてきた。

 国の見解はシンプルで、並行する在来線を第三セクター鉄道に転換することだった。

2015年に北陸新幹線の長野〜金沢駅間が延伸開業したことに伴い、北陸本線の市振〜直江津駅間は並行在来線としてJR西日本から経営分離された。同時にJR東日本から経営分離された信越本線の妙高高原〜直江津駅間の区間と合わせて、第三セクターのえちごトキめき鉄道(新潟県上越市)が運行する(写真:池口英司)
2004年3月に九州新幹線の新八代〜鹿児島中央駅間が開業した際、並行在来線として経営移管された第三セクターの肥薩おれんじ鉄道。かつてはJR九州・鹿児島本線の一部だった(写真:池口英司)

 新幹線が開通すれば、並行する在来線の価値は下がり、輸送需要も減少する可能性が高い。

 もとより、国鉄・JRの地方の路線は、それが「本線」を名乗っていても経営は赤字で、運営は楽ではなかったはずだ。それでも営業成績がさらに下がるだろうことを承知の上で、第三セクター鉄道という、いわば「地方」に押し付けたのである。

 そのような政治的な決着による「切り捨て」を実施することが、新幹線建設の条件とされたのである。

 新幹線を建設する意義とは何だろう?