ディープフェイク・ポルノを防ぐにはどうすればいい?
これはニューヨーク州立大学ビンガムトン校と共同で開発された技術で、ディープフェイク動画を96パーセントの精度で検出可能とのことだ。結果もほぼリアルタイムで返って来るため、たとえば前述のフェイク・ロボコールのような、直接的な詐欺行為への対応にも応用が可能だ。
こうした技術があれば、Xのようなソーシャルメディアにディープフェイク・ポルノが投稿されようとした際、事前に把握してブロックすることもできるだろう。
とはいえ、そのような対応をどこまで取るかは、ソーシャルメディアの運営者側にかかっている。中にはXのように、対応に積極的でないプラットフォームもあるだろう。
彼らに対応を強制するための法律ができればいいが、それにも一定の時間が必要だ。そうこうしているうちにフェイクを開発する側も技術力を上げ、検知ツールを突破するコンテンツを生成しようとするだろう。どこまでいっても、対応は後手になり、犯罪者とのいたちごっこになってしまうと考えられる。
当面は「#ProtectTaylorSwift」のように、被害者を守ろうという声をあげ続けるしかない。少しでも多くの関心を、少しでも長く維持することが、この問題の対策に注がれるリソースを増やすことになるはずだ。
【小林啓倫の生成AI事件簿】
◎AIインフルエンサーの「再現できない美」によって引き下げられる自己肯定感
◎生成AIの“思想”を左右?メディアによる記事のクローラーブロックは是か非か
◎生成AIで進化するハッカー、ロシアの諜報機関並みの能力を持つグループも登場
◎ニューヨーク・タイムズも激怒した、コピペ同然な生成AIの剽窃的アウトプット
◎診断での誤答率はまさかの8割強、なぜChatGPTはヤブ医者に成り下がったのか
◎倫理的・社会的に許容できない「人の死期を予測するAI」、実現は目と鼻の先
◎人手不足の切り札「AIプログラマー」の活用で問われる人間のマネジメント力
◎予測精度がまさかの1%以下だった犯罪発生予測AI、警察のAI利用に潜む不安
◎映像に証拠能力はなくなる?生成AIの登場で困難になる「事実」の把握
◎申告漏れや過度な節税にご用心、脱税摘発にAIを導入し始めた税務当局の本気度
◎生成AIの幻覚を利用した犯罪をどう防ぐか、早急に必要なハルシネーション研究
(ほか多数)
【小林 啓倫】
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ。獨協大学卒、筑波大学大学院修士課程修了。
システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業、大手メーカー等で先端テクノロジーを活用した事業開発に取り組む。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』『ドローン・ビジネスの衝撃』『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)、『情報セキュリティの敗北史』(白揚社)など多数。先端テクノロジーのビジネス活用に関するセミナーも多数手がける。
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