実はディープフェイクの被害にあっていたバイデン大統領
米ABCの報道によれば、ホワイトハウスはこの事件を「憂慮すべきこと」とし、議会に立法措置をとるよう要請。特に女性をターゲットにした、合意のない性的に露骨な画像の拡散について、重大な懸念であるとして強調された。
【参考情報】
◎Fake explicit Taylor Swift images: White House is 'alarmed’(ABC NEWS)
実はホワイトハウスの主であるバイデン米大統領自身、ディープフェイク被害にあっている。今年1月、米大統領選のニューハンプシャー州民主党予備選において、バイデン大統領の声を模した、偽の「ロボコール」が行われていたのである。
ロボコールとは「ロボットによる電話(コール)」を意味する呼び名で、要は自動的に有権者に電話をかけ、あらかじめ録音しておいた音声を流すことで、特定の候補者への投票を広く呼びかけるというツールだ。
日本ではいわゆる選挙カーがこの目的で使われることが一般的だが、国土が広い米国では、効率的かつ低コストで有権者にアプローチするツールとして、電話を使うロボコールが定着している。
だが、1月に発生したフェイク・ロボコールでは、AI技術を使って勝手に生成されたバイデン大統領の声で、「予備選には参加しないように」という呼びかけが行われていた。犯人は捕まっておらず、動機も不明だが、選挙に混乱を招く意図で行われたものと捉えられている。
そうした事件も起きていたことから、ホワイトハウスとしてディープフェイク・ポルノに対する声明を迅速に発表するに至ったのだろう。
また、米国では州レベルでのディープフェイク規制も進みつつある。
米国の非営利消費者団体であるパブリック・シチズンが発表している調査結果によれば、今年1月末の時点で、全米32の州で選挙におけるフェイク技術の利用を規制する州法を制定もしくは審議している。
テイラー・スウィフトという超有名人もフェイクの被害にあう状況になったとあれば、それを規制する州法を整備しようという動きも加速するだろう。
【参考情報】
◎Tracker: State Legislation on Deepfakes in Elections(PUBLIC CITIZEN)
このように政治的な関心も高まっているディープフェイクだが、今回の事件は、改めてフェイクコンテンツへの対応の難しさを示したと言える。