台湾と中国に隣接する日本が演じるべき役割

野嶋:中国に対しては、台湾を無理に統一しようとしてもいいことはない、むしろ火傷を負うという日本の意見を伝える必要があると思います。中国が台湾との関係を現状維持にとどめるのであれば、日本は中国と引き続き仲良くしますよということですね。

 台湾に対しては、台湾が民主主義で自由で開かれた国のままでいること、外交的には非公式関係ではありますが、日本と良い関係を保ち続けようという働きかけをするべきです。そして、我々はそんな台湾を応援しますと言い続けること。これは大事ですね。

 この二つは、中国と台湾の双方に対しいい顔をしているると言われてしまうかもしれません。ただ、台湾と中国のどちらにとってもいい話です。これは地理的に台湾と中国の近くに位置する日本が、確実に演じなければならない役割だと思います。

──台湾に関する研究や情報発信を続けていくモチベーションはどのようなところにあるのでしょうか。

野嶋:冒頭申し上げた通り、台湾は未承認国家です。台湾について考えるときは、政治学や国際関係論など、さまざまな問題も包括的に考えていく必要があります。日本で普通に生きていたら「国とは何か」なんて考えもしませんよね。

 日本には領土があり、長い歴史もあります。日本人のアイデンティティと日本の領土範囲や日本語という言語は明確なものです。

 一方で台湾をテーマにすると、私たち日本人は普段考えなくてもいいことを考えざるを得なくなります。今回の本『台湾の本音』(光文社)でも、台湾を通して、そんな「普段考えなくてもいいこと」に触れられるように工夫を凝らしました。

 台湾の素晴らしさはもちろんのこと、台湾問題の複雑さについても、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思っています。

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関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。You Tubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。