(高世 仁:ジャーナリスト)
ウクライナ軍がロシア軍と対峙する前線はどうなっているのか。激戦が続くウクライナの東部戦線と南部戦線を訪ねその実態を取材した。(取材は10月下旬)
【前回記事】戦地潜入、日本人記者が見た武器・弾薬不足をカバーするウクライナ兵の士気
最前線の分隊長も認める戦線膠着
10月下旬、私はウクライナ東部ドネツク州の前線を訪れた。
この日向かったのは第59独立自動車化歩兵旅団のBM-21自走多連装ロケット砲部隊。同旅団は、東部戦線でもっとも激しくロシア軍との戦闘をつづける主力部隊のひとつである。
BM-21は、1960年代初頭にソ連が開発した旧共産圏の代表的なロケットランチャーで、今も世界中で広く使用されている。ウクライナ軍が使用する兵器のほとんどは、1991年の独立前のソビエト時代のもの。前線ではロシア軍と同じ兵器で撃ち合っているのだ。
ウクライナ軍は6月以降、反転攻勢を続けているが、BM-21ロケット砲部隊を率いる分隊長ロマン氏(仮名)はどんな状況認識なのか、ズバリ聞いてみた。
「難しい状況になっています。ロシア軍は二重三重のかたい防衛ラインを築いているうえ、対戦車地雷を5平方メートルに一つという高密度で敷き詰めています。最前線では歩兵が少し進んでは塹壕を掘って守るという戦いで、一進一退です」と厳しい表情で答えた。