(英エコノミスト誌 2023年12月9日号)
戦後復興で中国はどの程度の役割を果たす可能性があるのか。
ウクライナの首都キーウ(キエフ)の多くの住民は、空襲警報にすっかり慣れてしまい、ほとんど気にもとめない。
結局いつものパターンで終わり、キーウの防空システムがそこそこ機能するか、警報が単なる用心のためだったことが判明するかどちらかになると考える(あるいは祈る)。
だが、避難しようとする人々にとっては、地下鉄網のトンネルが第一の選択肢になる。
警報解除まで長時間じっと待たねばならないこともあるが、中国製の機器のおかげでほっと一息つけるからだ。
通信網はファーウェイ、人気端末はシャオミ
地下鉄に第4世代移動通信システム「4G」のネットワークを張り巡らせる工事が完了したのは、ロシアによる侵攻が始まった2022年2月の数カ月前のことだった。
システムのハードウエアには華為技術(ファーウェイ)の製品が使用された。
ファーウェイは西側諸国から疑惑の目を向けられている中国の通信機器メーカーで、中国政府が利用者の秘密を取得できるようにする恐れがあるとの理由から、今では複数の国が同社の高速な「5G」技術の利用を禁じている。
空爆を恐れる避難者は、通勤客が行き交う傍らで折りたたみのイスに座ったり敷物の上で寝転んだりしながら4Gの通信システムを利用する。
中国メーカーの端末を使っている人もいるかもしれない。ウクライナでは小米(シャオミ)製の端末がトップクラスの人気を誇る。
中国は中立を表明しつつ、西側諸国の制裁回避を手伝うなどしてロシアに肩入れしている。だが、ビジネスや政治におけるウクライナとのつながりは壊れていない。
国連の仲介でウクライナ産の穀物を積んだ船が黒海を安全に航行できるようにした「穀物合意」では、運ばれた積み荷を最も多く受け取ったのは中国だった。
ロシアは今年7月にこの合意から離脱したが、その後新たに設けられた回廊を使った輸送量が上向くなかで、中国は依然、積み荷の重要な買い手になっている。
戦闘が完全に停止された時には、どちらが納得できる形になるかに関係なく、ウクライナが復興事業で支援を求めることになり、中国企業がそこに絶好のチャンスを見いだすかどうかと考えている人は多い。