(英エコノミスト誌 2023年12月2日号)

様々な支配形態で中国政府は企業への関与を強めている(写真は北京にある中華人民革命軍事博物館)

「党国家資本主義」の時代の到来

 北方重工(NHI)の本社ビルが視界に入ってくると、その屋上に赤色の箱文字看板も見えてくる。

 普通であれば社名が書かれていそうなものだが、高さ1メートルほどの巨大な漢字22文字で書かれているのは、長ったらしいスローガンだ。

「中国の特色ある社会主義の新時代に習近平思想の偉大な旗を高く振れ」と読める。

 本社ビルのロビーでは、広告看板ほどの大きさの習近平国家主席の肖像が来訪者に手を振っている。

 近くにある同社の工場では、地下鉄のトンネルを掘り進む掘削機が4階建てのビルほどの高さまでそびえ立っている。

 この会社は何十年も前に国家が設立したものだ。そして現在、いまだかつてないほど国有企業の典型的なイメージを体現している。

 ただし、正式にはNHIは民間企業だ。

 深圳市場に株式を上場している方大集団(ファンダー・グループ)という完全な民間企業が、2019年にNHIの株式を47%取得している。

 民間企業が国有企業を救済する珍しい事例で、これにより方大は第2位以下を大きく引き離す筆頭株主になった。株式取得でNHIは民営化されたはずだった。

民間資本になったのに国有企業?

 だが、中国の企業部門では何事もそう単純には進まない。

 方大はNHIの支配株主ではない。幹部らに聞くと、そんな株主はいないと言う。

 工場で働く従業員のなかには、NHIは国有企業だと言う人もいれば民間企業だと言う人もいる。

 NHIへの方大の関与についてある管理職に尋ねたところ、あの投資は「政策判断」だったという答えが返ってきた。

 ある投資アドバイザーは、事情があって明かせない理由から、投資家は方大にアプローチする際にはその背後に国家がいるかのごとく振る舞うべきだと教えてくれた。

 国家が株主名簿で目立つ存在になっていないにもかかわらず、だ。