(英エコノミスト誌 2023年11月18日号)

英国の外相に任命され首相官邸(ダウニング街10番地)に入るデビッド・キャメロン元首相(11月14日、写真:AP/アフロ)

英国が抱える問題の多くを引き起こした人物が今、問題を解決すると申し出ている。

 デビッド・キャメロン氏はいつもそれらしく見えた。

 世界最強の権力者でさえ、ジャケットを脱ぎネクタイもしめずに自然に振る舞う英国首相にたじろいだ。

 米国のバラク・オバマ元大統領はキャメロン氏のことを、「問題を把握する能力が素晴らしいうえに、会話が巧みで、人生で追い詰められたことがこれまでに一度もない人物のような落ち着きを備えている」と評した。

 キャメロン氏は素晴らしい首相になれる資質を持っていた。

 聡明で、勤勉で、機知に富み、物腰が洗練されていた。それなのに、ものの見事に最悪の首相の一人になった。

 ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)の是非を問う国民投票で敗れて首相を辞任した2016年から7年経ち、キャメロン卿が外相として政治の前線に戻ってきた。

(上院議員として外相を務めるために急遽、一代貴族となった)

 その道を開いたのは、リシ・スナク首相による強硬派スエラ・ブレイバーマン内相解任の決断だった。

 胸板の厚い予備役兵でもあるジェイムズ・クレバリー外相を内相に横滑りさせ、英国外交官トップの座を空けた。

 こうして11月13日の朝、ダウニング街10番地のドアをくぐるキャメロン氏のおなじみの姿が見られた。