(英エコノミスト誌 2023年11月4日号)
イスラエルによるガザへの砲爆撃は大変な犠牲を生んでいる。だが、ハマスの支配を打破しない限り、平和は手に入らない。
イスラエル軍が自ら作りだした地獄のような光景に突入している。
パレスチナ自治区ガザでは、イスラエルの航空機や大砲によって建物の10棟に1棟が粉々にされた。8000人を超えるパレスチナ人が死亡した。
その多くは子供だ。イスラエルによる封鎖のために燃料、清浄な水、食糧が不足しており、さらに数万人の命が脅かされている。
休戦すべきだとか、イスラエルは地上侵攻を断念すべきだといった声が世界中で沸き起こっている。
信用を失ったベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエルの政治家たちが報復を求めるのを耳にして、多くの人がイスラエルの行動はやりすぎで道義に反すると結論づけている。
そう主張する人の多くは、ユダヤ人国家が必要なことを信じながら、パレスチナ人の命を恐ろしく粗末に扱っているように見えるユダヤ人国家には恐怖心を抱いている。
この往年の紛争が終わって平和が訪れることへのかすかな希望が、ガザの瓦礫の山に埋もれてしまうことを懸念している。
ユダヤ人国家イスラエルの社会契約
説得力のある議論だが、導かれる結論は誤りだ。
確かにイスラエルは、パレスチナの一般市民の間に大変な数の犠牲者を出している。その数はできるだけ少なくしなければならず、そうしているように見えなければならない。
パレスチナ人の間では必須の人道支援物資も不足している。イスラエルは支援物資のガザ搬入をもっともっと認めなければならない。
しかし、たとえイスラエルがこうした責任を果たすことを決断するとしても、平和を実現するには、ガザを補給基地および軍事基地として利用しているハマスの力を劇的に削ぐしかない。
悲劇的なことに、それには戦争が必要だ。
そうなる理由を把握するには、10月7日に起きたことを理解しなければならない。
イスラエル人がハマスによる攻撃を「存在にかかわる脅威」として語る時、それは単なる言葉のあやではなく、文字通りの脅威を意味している。