(英エコノミスト誌 2023年10月28日号)

日常化したポピュリズムがアルゼンチンの改革を拒んでいる(写真はブエノスアイレス)

セルヒオ・マサ経済相とハビエル・ミレイ候補が決選投票へ進む。

 ラグビー・ワールドカップで勇敢なアルゼンチン代表チームが準決勝で打ち負かされてから2日後の10月22日、同国の政治が賢明な方向に進んでくれるのではないかという希望も同様に打ち砕かれた。

 大統領選挙の第1ラウンドでセルヒオ・マサ経済相は事前の予想を上回るほぼ37%の票を獲得して勝利した。

 世論調査でトップを走っていたリバタリアン(自由至上主義者)で「無政府資本主義者」のハビエル・ミレイ候補は30%の得票率で第2位。

 思慮分別のある中道右派のパトリシア・ブルリッチ候補は同24%にとどまり、選挙戦から脱落した。

 11月の決選投票にはマサ氏とミレイ氏が臨む。

 この先4週間の選挙戦は、連続メロドラマのようなアルゼンチン政治の基準に照らしてもドラマチックなものになりそうだ。

改革を拒絶した有権者とペロン主義の根強さ

 今回の選挙では、気が滅入るようなメッセージが2つ発せられている。

 1つ目は、アルゼンチンの有権者が中道右派の合理的な改革路線を却下したことだ。

 インフレ率が年138%に達し、自国通貨が過去4年間で95%近く下落している国では、驚くまでもなく経済が最大の関心事になっている。

 ところが有権者は、アルゼンチン経済が何十年も悲惨なパフォーマンスしか上げてこなかった主因であるポピュリスト政党「ペロン党」のマサ氏を支持した。

 第2位のミレイ氏は、急進的な自由市場政策パッケージを公約しているが、これはまず間違いなく実行できない。