(英エコノミスト誌 2023年10月28日号)
イスラエルとハマスの戦争にバイデン大統領がどう対処するかによって世界における米国の役割が決まる。
集結したイスラエルの部隊がガザへの地上侵攻の命令を待つなか、米国は巨大な空母2隻をイスラエル支援のために派遣した。
武装勢力ヒズボラとその後ろ盾であるイランがレバノン国境に新たな戦線を開かないよう、にらみを利かせるためだ。
そんなことができる国はほかにない。
2隻の空母は、米国の力は下り坂に入ったと世界の大半が考えている時に、20万トンの重みを持った米国の力の宣言となる。
この見方の成否は今後数カ月間で試される。その試験の重大さを誇張するのは難しい。
ジョー・バイデン大統領は10月20日、今の状況を「歴史の変曲点」と表現した。ウクライナに対するロシアの攻撃に加え、ハマスのテロも撃退しなければならないと警鐘を鳴らした。
言及こそされなかったが、発言の背景には中国による台湾侵攻の脅威も潜んでいた。
しかし、現状はバイデン氏が示唆する以上に危険だ。
米国は国外で、複雑で敵対的な世界を目の当たりにしている。1970年代の旧ソビエト連邦の停滞以降では初めて、重大かつ組織的な対抗勢力と向き合っている。
その筆頭は中国だ。
国内では、政治が機能不全に陥っているうえ、孤立主義志向をますます強める共和党にも悩まされている。今はイスラエルや中東のみならず、米国と世界全体をも決定づける瞬間となる。