(英エコノミスト誌 2023年10月21日号)
イスラエルは全方面からハマスを攻めている。
パレスチナ自治区ガザでは、2週間足らずでおよそ3500人が殺され、1万2000人が負傷し、100万人を超える人々が住まいを追われた。地区の住民のために米国と国連はエジプトに通じる道を開こうとしている。
市街が丸ごと爆撃を受け、瓦礫の山と化している。
食料、水、医薬品の供給が断たれ、国連は10月16日、ガザ地区の住民230万人が「奈落の底に突き落とされようとしている」と警鐘を鳴らした。
イスラエルの攻撃が始まって以降、ガザからは経済生活を営む手段がほぼすべて失われた。
過去20年間の大半において、ガザは外国からの支援を頼りに生き延びてきた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は10月18日、エジプトとの境界から少量の食料と医薬品をガザに搬入することを許可すると述べた。
ハマスがイスラエルを激しく攻撃した10月7日以降で初めて認められた物資搬入だ。
米国などイスラエルの同盟国は、もっと大量の物資の国境通過を認めるよう働きかけている。
だがそれと同時に、イスラエルは何としてでもハマスの息の根を止めたいと考えており、軍事兵器に加えて経済兵器の使用が不可欠になっている。
パレスチナ経済の惨状
パレスチナ経済は戦前から悲惨な状況にあったことから、人道的大惨事の回避が難しくなっている。
イスラエルとガザ、そしてヨルダン川西岸は、1994年に国連が仲介した合意に基づき、1つの市場を共有している。
市場を共有すればパレスチナ人がイスラエルで働くようになり、イスラエルの資本がガザやヨルダン川西岸にどっと流入し、そこから高いリターンが得られるというのが合意の論理だった。
実際には、イスラエルの決めた規制が残り、パレスチナ経済は支援や寄付に依存する状況が続いている。
戦争の直前には、平均的なイスラエル人は平均的なパレスチナ人よりも15倍豊かだった。
ヨルダン川西岸では、下水道を利用できる住民は全体の3分の1にとどまり、およそ10%は水道なしで暮らしている。