(英エコノミスト誌 2023年10月21日号)
イランとロシアと中国が騒乱から利益を得ている。
事態が悪化するスピードの何と速いことか。
パレスチナ自治区ガザのアル・アハリ・アラブ病院で10月17日夜に大規模な爆発があり、避難していたパレスチナ人が多数犠牲になった。
彼らの命を奪った原因が大量の燃料を積んだパレスチナのミサイルの落下だったことを示す強力な証拠にもかかわらず、アラブ諸国は急ぎイスラエルを非難した。
厳重に武装したレバノンの民兵組織ヒズボラは、イスラエルとの全面戦争にじわじわと近づいている。
イスラエルとアラブ近隣諸国との間に細心の注意を払ってかけられた橋は、がれきと化した。
何とか団結を維持しようとする力の何と脆いことか。
爆発の15時間後、ジョー・バイデン米大統領がイスラエル入りした。世界の重さを背負った高齢の男性だ。
大統領の外交は地政学的な大きな節目だ。
イスラエルへの哀悼と支持を発信するだけでなく、この危機が中東にとって、そして米国にとっていかに重要かという問題に焦点を合わせるからだ。
イスラエル北部に第2の戦線ができる恐れ
過去半世紀にわたり、中東地域に何らかの形の秩序をもたらす意思と力を持つ国は米国だけだった。
イラクやシリアを含む中東各地で米国の政策が数々失敗しているにもかかわらず、バイデン大統領とアントニー・ブリンケン米国務長官は今再びその重荷を背負った。
ガザ地区は死と病に脅かされている。毒はアラブ中に広がりつつある。事態はまさに急を要する。
最も切迫している危険は、イスラエル北部のあの第2の戦線だ。