(英エコノミスト誌 2023年11月4日号)

ジャネット・イエレン米財務長官は高金利が良いことだと言うのだが・・・(写真はFRB議長時代のイエレン氏=2017年7月12日撮影、FRBのサイトより)

高金利の長期化をはじめ、数々の脅威が待ち受けている。

 あちこちの戦争が激しさを増し、地政学的な情勢に暗雲が漂っているにもかかわらず、世界経済はとめどない喝采の源泉になっている。

 つい1年前には、高金利がほどなく景気後退をもたらすとの見方に誰もが同意していた。今では楽観論者でさえ困惑を隠せない。

 米国経済は第3四半期も絶好調で、国内総生産(GDP)成長率は前期比年率で4.9%に達した。

 世界全体を見渡してもインフレ率は低下しており、失業はほとんどの国で低位にとどまっている。

 主要国の中央銀行が金融引き締めを停止した可能性も出ている。不動産危機に見舞われた中国では、小規模な景気刺激策が奏功しそうに見える。

 しかし残念なことに、この元気は続かない。

 今日の経済成長の土台はぐらついているように見える。先の方をじっと見つめれば、数々の脅威が待ち構えているのが分かる。

金利の高止まりで経済政策が失敗

 景気の好調さは、金利はもう急上昇こそしないものの、それほど大きくは下がらないという見方を後押ししている。

 ここ1週間を振り返っても、欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を据え置いた。

 イングランド銀行は本誌エコノミスト発行直後の11月2日の会合で両行に続くと予想されていた。

(編集部注:実際に5.25%で政策金利を据え置いた)

 長期債利回りも景気の盛り上がりを受けて急上昇している。

 米国政府は、パンデミックによる景気後退の最中にはわずか年1.2%の金利で資金を30年借りることができたが、今では同5%の利息を払わなければならない。

 低金利で知られる国でも長期金利は急上昇した。