米原駅に停まる近江鉄道の車両。話題を集めたあの“猫の駅長”から続くノウハウが「存続」の決断を促した米原駅に停まる近江鉄道の車両。話題を集めたあの“猫の駅長”から続くノウハウが「存続」の決断を促した
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※近江鉄道線「血風録」シリーズの過去記事は、最終ページにリンクがあります。あわせてお読みください。

(土井勉:一般社団法人グローカル交流推進機構 理事長)

「存続」の判断へと導いた報告書

「近江鉄道線地域公共交通再生協議会設置準備調整会議」(のちに、近江鉄道線活性化再生協議会と改称)が立ち上がったのは、いまから約5年前、2018年12月のことだ。

 滋賀県と沿線10市町、近江鉄道株式会社、一般財団法人地域公共交通総合研究所(以下、「地交研」)、学識経験者が構成メンバーとなった、法的な位置づけのない任意協議会である。

 任意協議会の目的は、このローカル線の存廃を決するための論点整理をして「地域公共交通活性化再生法」に基づく法定協議会へとバトンをつなぐことにあった。法定協議会に続く前段で、近江鉄道線に関わるプレイヤーと専門家が一堂に会して意見交換する場として機能することが求められたわけだ。

 ここに至る経緯は、本連載で紹介してきた通りである。

 この任意協議会の中で、滋賀県は地交研に対し、ある分析を委託した。それは、近江鉄道線の存廃や再生に関わる諸課題についてのとりまとめだ。

 これに対し地交研は2019年3月、「地域公共交通ネットワークのあり方検討調査報告書」(以下、「報告書」)1)という形でその求めに応えた。

 そして、この報告書はその後、存廃をめぐる結論を導き出す重要な役割を果たしていくことになっていった。

図-1 地交研の報告書の表紙図-1 地交研の報告書の表紙
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