2022年度に認知されたいじめの件数は68万1948件と過去最多となったが……(写真:アフロ)

 文部科学省は、10月3日に「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を発表した。報告書によれば、2022年度に認知されたいじめの件数は68万1948件、不登校の小中学生は29万9048件と、いずれも過去最多となった。

 この結果を受けて、文科省はこども家庭庁と連携して、不登校やいじめに対応する「緊急加速化プラン」を策定したという。大手新聞各社はこの調査の結果を報じているが、はたして本当にいじめは増えているのか? いじめを研究している明治大学准教授の内藤朝雄氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

実態を表していない学校の「自己申告」

──文科省の調査によると、全国の小中高校と特別支援学校で2022年度に認知されたいじめの件数は前年度から1割増で、過去最多となりました。なぜいじめが増えているのでしょうか?

内藤朝雄氏(以下、内藤):この文科省の調査は例年行われている調査です、ただ、この調査は学校自らが自分たちのところで起きているいじめや不登校の状況に関して報告した結果を集計しているものですから、いじめの実態を表している調査とは言えません。

 統計を見るときには、それがどのようにつくられた数字であるかを考える必要があります。さまざまな統計の食い違いにも注意する必要があります。たとえば、警察が認定した自殺数と文科省が認定した自殺数は食い違っています。

 不登校でも、学校に報告させた調査だと、学校側に責任があるという印象にならないように報告されていたこともありました。

 他の調査だと、教師と生徒の折り合いが悪かったり、いじめが原因だったりと、報告とは異なる実情がしばしば明らかになります。同じ文科省による調査でも学校に報告させたデータと不登校経験者に質問した調査でも不登校の原因が食い違います。

 学校は自分たちに都合の悪いことは黙っていることが多く、学校が教育委員会にあげて、教育委員会が文科省にあげる情報は実態を表しているとは言えません。

 もっとも、文科省の調査で明らかにされているいじめの件数は正しいとは言えませんが、皮肉な言い方をすれば、「その地域がどれほどいじめに対して敏感かという点を表している」と言うことはできます。

 つまり、数値が少ないほうが、その地域の教育委員会や学校が、いじめの把握に真面目に取り組んでいない、つまり「さぼっている」と見ることができるのです。

──実態を表していなかったとしても、今回の調査では、いじめの件数が大きく増えています。これは何か要因があると思われますか?