2023年9月20日の国連安全保障理事会(以下、安保理)の特別会合にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が出席し、敵国であるロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使と同じテーブルで向かい合った。
ネベンジャ氏が、安保理の理事国より先にゼレンスキー氏が発言することに反発すると、安保理の議長を務めるアルバニアのエディ・ラマ首相は、次のように一蹴した。
「ロシアが戦争をやめることだ。そうすればゼレンスキー氏がここに立つことはない」
国連憲章で謳われた主権と領土の尊重や紛争の平和的解決の原則を根底から覆し、ウクライナの主権と領土を踏みにじる軍事侵攻を続けるロシアの暴挙に辟易していた筆者は、溜飲を下げる思いであった。
さて、ゼレンスキー大統領は、安保理特別会合において、常任理事国のロシアが「拒否権を悪用し、すべての国連加盟国に不利益をもたらしている」と述べ、拒否権を奪うべきだと訴えた。
筆者は、拙稿「穀物輸送巡るロシアの暴挙、安保理常任理事国剥奪を」(2023.8.4)でロシアの安保理常任理事国の地位剝奪を提案した。
では、どのような方法で、ロシアの常任理事国の地位を剥奪するのか。
緊急特別総会を開催して、「ロシアの安保理常任理事国の資格を停止すること」を決議するのである。
現在、第11回緊急特別会期が開催中である。これまでに緊急特別総会において6つの決議が採択されている。総会で審議され採択された決議は国際社会の総意としての意義を持つ。
決議には、法的拘束力はないとはいえウラジーミル・プーチン大統領のみならずロシア国民にも相当のプレッシャーを与えるであろう。
一例を挙げれば、2022年4月7日、緊急特別総会は、ロシアの人権理事会の理事国資格を停止することを決議(ES-11/3)した。
これを受けてロシアは即日人権理事会からの脱退を表明した。
この緊急特別総会は、1950年11月3日に通常総会で採択された「平和のための結集(Uniting for peace)」決議(決議377A)に基づくものである。
付言すると、日本のマスメディアは、国連の総会には3つの種類があることを知ってか知らずか、3つの総会を弁別していないように筆者には見られる。
国連の総会には通常会期の総会(通常総会)、特別会期の総会(特別総会)、緊急特別会期の総会(緊急特別総会)の3つの種類がある。
特別総会は常任理事国の1か国でも拒否権を発動すれば開催されない。
一方、緊急特別総会は常任理事国が拒否権を発動しても常任理事国、非常任理事国の別なく15か国の理事国のうち9か国の賛成があれば開催される。
本稿は、これまで筆者がJBpressに投稿した記事から、緊急特別総会に関連する情報を取り纏め補足したものである。
初めに「平和のための結集」決議(決議 377A)について述べる。次に、緊急特別会期の招集手続きについて述べる。次に、過去の緊急特別会期の開催状況について述べる。
最後に第11回緊急特別会期において採択された各決議の内容について述べる。