15回目の投票でやっと下院議長に選ばれたケビン・マッカーシー氏(1月4日撮影、写真:ロイター/アフロ)

脆弱な下院議長、実現性薄い弾劾審議決める

 党内基盤が脆弱な米共和党のケビン・マッカーシー下院議長は9月12日、ジョー・バイデン大統領に対する正式な弾劾調査を開始するよう下院3委員会に指示した。

 下院で過半数が取れるかどうか、怪しげな状況でバイデン氏の「汚職文化」(Corrupt Culture)を糾弾しようというのである。

 マッカーシー氏の決断の48時間後、高齢のバイデン大統領の不肖の息子、ハンター氏がデイビッド・ワイズ特別検察官に起訴された。

 弾劾の動きには追い風になりそうな事態になってきた。

(司法取引でケリがつくはずだった銃規制法違反・納税滞納容疑・外国代理人法違反事件は連邦地裁判事の差し戻し判決で振り出しに戻り、トランプ政権時に指名されていたワイズ特別検察官に再調査が委ねられていた。特別検察官は筋を通したわけだが、バイデン氏にとっては「トランプの伏兵」がこんなところにいたとは、悩ましいと思っているに違いない)

 下院の動き、ハンター起訴――。同時並行して米政局は新たな局面に突入した。

 まず下院の弾劾訴追劇だ。

 ワシントン政界の客観的な見方はこうだ。政界通の一人、P氏はこう指摘する。

「マッカーシー氏も党内最大保守勢力、政策集団の『フリーダム・コーカス』*1が突きつけた最後通告をのんだ」

*1=「フリーダム・コーカス」(Freedom Caucus)は、2015年に結成された共和党下院の保守派政策集団。公式にはメンバーの名前は公表していないが、下院議員45人。会長はスコット・ペリー下院議員(ペンシルベニア州選出、副会長はジム・ジョーダン下院議員(オハイオ州選出)。大統領選に立候補しているロン・デサンティス・フロリダ州知事も下院議員当時メンバーだった。