「死体性愛者」でもあった

 被害者の年齢は報道によって異なるものの、最年少で2歳から、最高齢で75歳までの男女の幼児や少年少女、成人が含まれているとされる。 2017年までBBCを監督していた「BBCトラスト」が後日発表した独立審査の報告書には、サヴィルは「死体性愛者(ネクロフィリア)」でもあったとの記載もある。英エンタメ業界の重鎮であった同人物の、異様な性への執着が浮き彫りにされている*7

*7BBCトラストによる独立審査(2016年2月25日付け)

2016年、BBCは独立審査を受けて会見を開いた(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 性加害は、慈善事業をした病院をはじめ、BBCの控室やスタジオでも行われたと言われている。警察の捜査結果で指摘されている通り、自らの性欲を満たすため、王室からもお墨付きの揺らぐことのないセレブとしての立場を存分に活用していたと言えるだろう。

 先のBBCトラストによる報告書では、BBC局内において、サヴィルの生前から既にその性嗜好についての噂が存在したことが明らかとなっている。噂の多くは、サヴィルによる幼児や、10歳ほどからの少女への性的興味だったという。

 また、BBCの経営陣もサヴィルのこうした評判を既に知っていたのだろうと憶測し、「自らが何かをすべきだと思ってはいなかった」と考えた一部のBBC局員もいた。報告書の中でも最も興味深かったのは、BBCにおいて、局にとって大切な人物、例えば重要なタレントには、通常必要とされる規範や価値観を求めなくていいという「暗黙のルール」が存在していたのではないか、という2003年調査の引用だ。

 例としてサヴィルの名前を出し、サヴィルが「局にとって大切なタレント」であるために不適切な性的行動が見逃されてきたのではないか、という趣旨の質問をすると、相当数のBBC局員がそれに同意する回答をしていたという。

 スキャンダルが明るみに出た2012年、米ニューヨーク・タイムズが報じたところによれば、ジャニー喜多川氏と違ってサヴィルは自身の不適切な性加害について、堂々と自伝に記してもいる*8。性加害の「噂」どころか、本人が平然とその「武勇伝」を公言していた。

*8A Shield of Celebrity Let a BBC Host Escape Legal Scrutiny for Decades(2012年11月1日付、米ニューヨーク・タイムズ)

 同記事ではサヴィルに関する性加害を2007年ごろから捜査した警察官が「これだけの人脈がある人物に対峙したいだろうか、ということに尽きたと思う」とインタビューに答えている。人脈とは王室や議会関係者、更には警察上層部を指すと記事は指摘している。