「強者にこびる公共放送などいらない」

 例えば、立憲民主党の小西洋之参院議員は9月8日、SNS上で、BBCと同じく公共放送であるNHKのジャニーズ事務所への取材体制を「強者に媚びて弱者を見捨てる公共放送など要らない」(原文ママ)などと厳しく批判している。

NHKは9月11日、ジャニーズ問題をクローズアップ現代で検証した(写真:西村尚己/アフロ)

 一部週刊誌を除く大半の報道各社はこれまで、ジャニー喜多川氏個人の性加害問題に対して沈黙してきた。

 それだけではない。20年以上前の事例だが、かつての所属タレントが道路交通法違反と公務執行妨害の現行犯で逮捕された時、テレビ各局が一般的に用いられる「容疑者」ではなく「〇〇メンバー」という不思議な呼称を付けたことが世論の反発を招いた。当時からすでに放送各局によるジャニーズ事務所への「配慮」が取り沙汰されていた。  

 背景に、報道各社に対して強権を振りかざすジャニーズ事務所への過剰な「忖度(そんたく)」があったことはほぼ間違いないだろう。その報道各社の姿勢には、国内外の放送業務に長く携わってきた、いち放送人としての筆者の立場からも、その責任は厳しく追及されてしかるべきだと感じる。性被害に遭って心に深い傷を負った人たちの無念は、想像するに余りある。

 ジャニー喜多川氏の性加害を検証した外部専門家による再発防止特別チームの報告書によると、性加害は60年超も続いていた。いまだ声を上げることすらできない被害者も多いだろう。

 ただ、筆者はこれまでに東京などで複数の海外メディア業務に携わった経験から、一つだけ指摘しておきたいポイントがある。今回BBCが大々的にジャニー喜多川氏の所業を伝えることができた要因の一つには、ジャニーズ所属タレントが看板番組のレギュラー出演者であるなどといった、国内メディアが抱えている「しがらみ」がなかったことも影響したと筆者は見ている。