NHKは「クロ現」で検証番組を放送

 ジャニーズ事務所の再発防止特別チームの調査報告書は、長年この問題を放置してきたメディアが被害拡大の一端を担ったと指摘した。これ受けてNHKは「この問題に対する認識が薄かった」とコメントした*3

 果たして本当に、現場を担う取材者の全てが「認識が薄かった」のだろうか。

*3ジャニーズ事務所会見受けて NHKがコメント発表(9月7日付、NHK)

 9月11日、NHKはクローズアップ現代にて、「“ジャニーズ性加害”とメディア 被害にどう向き合うのか」を放送した。筆者はリアルタイムで放送を見られなかったが、NHKのみならず他の国内放送局においても、上層部の方針や芸能を扱う他部署との「しがらみ」という大きな壁などが存在したのだろう。

 そして、取材者たちの中には、ジャニーズ問題を報道したくともできず、ほぞをかんできた人もいたのではないか。その中には、自らが報じられないのならせめて、BBCのような「外圧」によってそんな忖度体質にメスが入り、無数の被害者に光が当たることを期待してきた良識ある取材者もいたのではないか。

 筆者はNHKをはじめとする国内放送局と取材活動を何度も共にしてきたことがあるが、国内には今でも海外放送局の取材力を凌駕(りょうが)する、地道で誠実な企画制作を行う取材者も少なからずいる。今回のジャニーズ報道にからみ、国内メディアがダメでBBCの取材力が突出して優れているという意見には、筆者は同意しない。問題は、取材力の差ではないからだ。 

 実際、ジャニーズ問題を世界に報じたBBCですら、英国内においてまさにその「しがらみ」により、被害者は500〜1000人に及ぶとも言われる大物芸能人への性的加害を40年以上もの間放置した、という疑惑が存在した。「ジミー・サヴィル事件」である。