日本でもメディアに対する独立審査を

 BBCは今秋、サヴィルの生涯を描いたドラマを放送開始予定だった。同じような性加害を防止するために被害者のインタビューを含むと報じられたが*9、放送が決定した翌年の2021年、性的被害者で作る団体から「私たちのトラウマはあなたのエンターテイメントではない」と猛反発を受けている*10。一部タブロイド紙によると、同番組は「サヴィルの伝記物語にも見えてしまう」という恐れから、放送延期になったとされている*11

*9Victims of Jimmy Savile to speak in BBC drama starring Steve Coogan(2023年8月17日、英タイムズ)
*10Our Trauma is Not Your Entertainment(2021年11月3日付、Survivors’ Network)

*11Jimmy Savile drama 'delayed to give more focus to the victims'(2023年9月9日付、英デイリー・メール)

死後に性加害は発覚したBBCの大物司会者ジミー・サヴィル(写真:Mirrorpix/アフロ)

海外メディア報道は「お墨付き」ではない

 筆者は常々、日本で起きた事象について報道各社が「海外メディアがこう伝えた!」と大々的に報じる現象に少なからず違和感を抱いてきた。自国で起きた事象について、わざわざ海外の報道機関を引用して日本がどう見られているかを報じる手法だが、同じような報道を英国であまり見た記憶がない。

 何か海外報道機関の方が格上で、彼らが伝えていることがお墨付きにでもなるのかと、疑問を感じてきた。

 筆者は東京にある海外放送局の支局からキャリアをスタートした。常駐勤務やフリーランスなどとして、9社ほどの大手欧米系メディアと仕事をした経験がある。2000年代からは主に国内メディア各社で仕事をしてきたが、多くの海外メディアにおいて、国内でも起こり得るような間違いや誤報、また、ある種の偏向とも言える報道も目にしたことが少なくない。

 ある放送局業務の際、当時の天皇陛下と首相のキャプションを取り違えられたことがある。東京で入れた字幕ではないので慌てて本国のデスクに電話を入れ訂正を促すと「何が問題なのか」と脳天気にも聞き返された。サッチャー首相とエリザベス女王を取り違えたようなものだ、と説得すると、ようやくことの重大さを理解された。

 また、これは視聴者として見たものだが、英国人被害者が絡む凶悪犯罪者の逃亡先が「沖縄(Okinawa)」であるのに、なぜかテロップでは「Osaka」になっていた。「O」しか合っていないと、見ていた同僚たちと総ツッコミをしたこともある。

 捕鯨問題に関する報道では、欧州系記者と大げんかになったこともある。恐らく多くの海外メディア業務に携わった日本人スタッフなら一度は似たような経験があると推察するが、英語を話す海外の環境保護団体の言い分ばかりを取り上げ、意図的に地元の漁業関係者の言い分を少なく編集していたからだ。

 コロナ禍での東京五輪開催批判に関しても、首をかしげたくなるようなミスリーディングな記事もしばしば目にした。こうした事例は、記憶をたどると枚挙にいとまがない