ジャニー喜多川氏の性加害疑惑を報じた英BBC(写真:ロイター/アフロ)

 今年3月に英公共放送BBCが報じた故ジャニー喜多川氏の性加害問題。ドキュメンタリーが放映されてから、その衝撃は日本にも広がり、20年以上の時を経て、この問題が大きく再燃している。

 ドキュメンタリーの中では、リポーターを務めたジャーナリストが藤島ジュリー景子社長に取材を申し込み、したたかに門前払いを食らわさられた。しかし、結果としてジャニーズの傲岸不遜な態度や隠蔽体質は批判をどんどん大きくしてしまった。

 一連の騒動のキッカケを作ったジャーナリストで、BBCの番組制作を手掛けるモビーン・アザール氏に話を聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

(全2回の#1)
◎#2「ジャニーズ性加害問題を報じたBBC制作陣が語る、ジャニーズ事務所の権力構造」(5月28日公開予定)

──BBCのドキュメンタリーが英国で放送され、その衝撃は日本でも広がり続けています。次々と新たな被害者が名乗り出て、過去の体験を告白しています。日本の大手メディアは当初のこの件を扱うことができませんでした。しかし、この問題を考えるジャニーズタレントのファンも結束し、ジャニーズ事務所に本件を調査するように手紙を送りました。藤島ジュリー景子社長も動画と声明文を発表して謝罪しました。そして、ついに大手メディアも報じ始めて、ジャニーズ事務所を退所するアイドルたちも相次いでいます。一連の変化はあなた方のドキュメンタリーから始まりました。このことをどう思いますか。

モビーン・アザール氏(以下、アザール):とても嬉しいです。これは制作チームみんなで成し遂げたことです。このドキュメンタリーの監督はイギリス人と日本人の間に生まれたメグミ・インマンという方です。彼女がガイドをしてくれ、通訳もしてくれた。そして、戻ってから編集作業をしてくれました。

 また、このドキュメンタリーの制作では週刊文春の記者とも仕事をしました。ずっとジャニーズの性加害を追いかけてきた方です。このドキュメンタリーの制作には時間がかかりました。日本の方にもここで語られていることを是非知ってほしい。ここにきて、ようやくいくつかの日本の大手メディアが本件を取り上げるようになったことは非常に嬉しい。

 しかし、まだやるべきことは終わっていません。藤島ジュリー景子社長が声明を発表しました。私はあの謝罪の声明文を翻訳付きで読みました。動画も繰り返し何度も見ました。私は彼女が性的虐待の実態を「知らなかった」とは信じない。知らないわけがないのです。

 なぜそう考えるかと言うと、私は喜多川氏の性加害の件で何度も彼女に連絡したからです。

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