今年3月に英公共放送BBCが報じた故ジャニー喜多川氏の性加害問題。ドキュメンタリーが放映されてから、その衝撃は日本にも広がり、20年以上の時を経て、この問題が大きく再燃している。
ドキュメンタリーの中では、リポーターを務めたジャーナリストが藤島ジュリー景子社長に取材を申し込み、したたかに門前払いを食らわされる。しかし、結果としてジャニーズの傲岸不遜な態度や隠蔽体質は批判をどんどん大きくしてしまった。
一連の騒動のキッカケを作ったジャーナリストで、BBCの番組制作を手掛けるモビーン・アザール氏に話を聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
(全2回の#2)
◎#1「ジャニーズ性加害疑惑を報じた英BBC制作陣が語る、なぜ我々は報じたのか」から読む
──BBCのドキュメンタリーの中で、あなたは数名の元ジャニーズJr.の方々にインビューしています。彼らはジャニー喜多川氏から性被害を受けており、成功したければ性的虐待を我慢する必要があると言いました。こういった証言を聞いて、どう思われましたか。
モビーン・アザール氏(以下、アザール):性風俗産業や性的虐待や権力の力学に関して、私はたくさんの企画を作ってきました。その私が日本で被害者の証言を通して見たことは、権力の行使による虐待でした。
ジャニー喜多川氏はすべての権力を握るキングメーカーでした。彼が成功させると決めれば、その人は成功する。彼はスターを生み出す装置を持っていた。もし喜多川氏の要求を断れば、「触らないで」などと口にすれば、少年たちのキャリアに影響する。「要求に応じなければデビューはない」などと少年たちは言われていました。
事務所が後押ししなければスターになれない。この権力構造は極めて強力で、被害者の年齢を問わず酷いことですが、特に怖ろしいのは被害者たちがまだ幼かったことです。この年齢で抵抗するか否かを判断するのは不可能だと思います。子どもに性交渉の了承は無理です。まだ幼いのです。
喜多川氏はとんでもない権力の使い方をしました。
──ドキュメンタリーの中で、あなたは喜多川氏の写真を使おうとしました。すると、ストックフォトの会社の担当者は「我々は10枚の喜多川氏の写真を保持しているが、使うと問題になるので、これを使用することはできない」と言いました。日本のメディアがジャニーズ事務所を怖れていることについて、どんな印象をお持ちになりましたか。