(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 ジャニーズ事務所の創業者で前社長のジャニー喜多川氏(2019年死去・享年87歳)による所属タレントへの性加害について、藤島ジュリー景子社長が動画と文書を発表して公式に謝罪したのは、5月14日の日曜日の夜のことだった。

 奇しくも、同事務所所属の松本潤が主演の徳川家康を演じる大河ドラマ『どうする家康』の放送が終わったあとの夜10時台のNHKニュースが一報を伝えていて、驚かされた。大河ドラマには、やはり同事務所所属の岡田准一が家康の盟友、織田信長役で出演している。

海外メディアによって白日の下に晒された日本の恥部

 ジャニー喜多川氏による所属タレントの性被害については、今年3月にイギリスの国営放送「BBC Two」がゴールデンタイムに『Predator:The Secret Scandal of J-Pop』(邦題「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」)と題する1時間のドキュメンタリーを放送して波紋を広げると、4月には日本外国特派員協会で、ジャニーズJr.(Jr.とは10代が中心のCDデビュー前のタレントの総称)に所属していたカウアン・オカモト氏が記者会見を行なって、中学校を卒業する直前に「ジャニーさんに口淫されました」と赤裸々に告白している。

 この問題を、日本のメディアが全く報じてこなかったわけではない。一部の雑誌、あるいはジャニーズ事務所に所属していた人物やジャーナリストがまとめた単行本で、ジャニー喜多川氏の性的虐待が伝えられていた。

 1999年には『週刊文春』がこの問題を取り上げた。ジャニー氏と事務所は文藝春秋に名誉毀損の損害賠償を求めて提訴するも、ジャニー氏の性的虐待を認めた東京高裁判決が2004年の上告棄却によって確定している。これについては、藤島ジュリー景子社長は公表した文書の中で、当時すでに取締役であったにもかかわらず「知らなかった」としている。

 ここへきて、いわばしがらみのない“外圧”によって日本の恥部に焦点が当てられ、様々な問題が噴出してきているわけだが、その中のひとつに日本の報道機関の姿勢を問うものがある。