「これはまだ見たばかりで取材もできていないし、番組でやるという指示もありませんので…予定はないです」

 やたらに仕切りたがる芸能デスクだったが、そう殊勝に答えると、チーフ・プロデューサーが言葉を次いだ。

「…と、いうことだそうです」

 そこで写真週刊誌を持ち込んだ男性が言った。

「じゃ、やらないということでいいね」

「次は朝の番組だな」

 誰が番組の責任者なのかはっきりしないような回り持ちの確認作業で、いつの間にかジャニーズ事務所のスキャンダルは「やらない」ということになっていく。

「次は、朝の番組だな」

“偉い人”はわざわざそう呟いて、次の部署に移動していく。

 果たして、彼が事務所に忖度したものか、あるいは何らかの要望があったのか、そこは定かではないが、人気アイドルを多数抱えて、視聴率を稼いでくれるジャニーズ事務所には、それだけの力があった。情報番組や報道に携わる局員もサラリーマンだ。自身の高給の礎でもある。逆らって左遷させられても、面白くはない。下請けや派遣ならなおさらだ。