昨年12月に、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に関する被害者救済法案が衆院本会議で可決された。今年1月には新法が施行され、未施行だった行政措置や罰則についても4月1日に施行された。あたかも、これで被害者が救済される環境が整い一件落着の印象があるが、実際には高額献金に一定の歯止めをかけたに過ぎない。しかし、すでに報道は下火になりつつある。
このまま統一教会問題は終わってしまうのか。残された2世信者の救済はどうなっていくのか。2世信者はどのような葛藤の中を生きているのか──。『小川さゆり、宗教2世』(小学館)を上梓した旧統一教会元2世信者の小川さゆり氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──小川さんのご両親は、統一教会の合同結婚式で出会い、結婚されています。合同結婚式がどのようなプロセスで進められるのか教えてください。
小川さゆり氏(以下、小川):合同結婚式だけが統一教会の結婚の形式ではありません。「父母マッチング」と言いますが、親が2世信者たちの結婚する相手を決めることもあります。これに対して、合同結婚式というのは信仰のレベルの高い人が参加を許される結婚の形式です。
ですから、そこには参加の基準がある。今の基準が実質的にどのようなものなのか知りませんが、私が以前聞いた内容だと「7日間の断食」「必要な修練会への参加」「一定期間の間の相当な数の敬拝(拝むこと)」「140万円の感謝献金」などをしなければならないそうです。そういった一連の行為を行うとエントリーできるようです。
合同結婚式の写真や映像がメディアでも流れましたが、会場にはもの凄い数の人がいます。あそこにいる人たちが皆マッチングされて当日相手が発表されるわけではなく、もうすでに結婚相手は決まっていて、自分たちの結婚式もあそこに参加して一緒に行う、という場合があるようです。
私の親が結婚した時期というのは「写真マッチング」が始まった時期でした。文鮮明が写真を見て「この人とこの人」という風にマッチングして決めていくのです。ですから、発表された結果を見て初めて相手を知る、ということになるそうです。
──ご著書を読みながら、合同結婚式で相手を決めてもらうことが楽だという発想を持つ人もいるのかもしれないと思いました。自分で結婚する相手を探してアプローチするのは大変だけれど、偉大だとされる人が「あなたたちは運命で結ばれている」と言ってくれたら、悩む必要がない。でも、実際にそのような経緯でできた家庭で育つと、どんな実感を持つものなのでしょうか。
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