火力発電所から出る水蒸気。電気料金高騰の背景に、再エネの導入に伴う火力発電所の廃止がある(写真:アフロ)

 電気料金の高騰が止まらない。もちろん、政府も手をこまぬいているわけではなく、2022年10月に「電気・ガス価格激変緩和対策」を閣議決定した。これは電気・都市ガスの小売事業者に対し、2023年1月以降の電気・都市ガスの使用量に応じて、補助金を給付するものだ。それを原資として消費者への値引きが行われるので、一時的には消費者の負担は緩和される。

 しかし、これは本質的な解決策ではない。先進国たる日本でなぜ電気が足りない事態になったのか。電力自由化の効果はあったのか。なぜ原子力発電所を再稼働させる必要があるのか──。『電力崩壊 戦略なき国家のエネルギー敗戦』(日本経済新聞出版)を上梓した竹内純子氏(国際環境経済研究所理事/東北大学特任教授/U3イノベーションズ合同会社共同代表)に聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター・ビデオクリエイター)

──まず、昨今の電気料金高騰の理由について教えてください。

竹内純子氏(以下、竹内):電力料金値上がりの理由は、主に二つあります。一つ目として、原子力発電を停止させているため火力発電への依存度が上昇し、燃料費がかさむようになったことが挙げられます。

 火力発電は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やして発電します。日本はそれらの資源を海外からの輸入に頼っています。化石燃料を安定的かつ安価に調達することは容易なことではありません。これは、今回のロシアによるウクライナ侵攻でもよくわかったと思います。

 そのため、化石燃料を必要としない再生可能エネルギー(以下、再エネ)と原子力の活用を推進していくことが求められてきました。

 原子力発電ではウランという燃料を必要とします。原子力発電では、少量の燃料から莫大なエネルギーを生むことができ、いったん燃料棒を原子炉に入れると2~3年程度の発電が可能です。

 そのため「準国産エネルギー」として自給率にカウントするというのが国際的な考え方です。燃料代がほとんどかからないため、設備を動かせば動かすほど、安い電気を供給できるというわけです。

 しかし、2011年の福島原発事故を受けて、日本ではほとんどの原子力発電所が稼働停止、ないしは廃止措置中という状況に陥り、火力発電への依存度が7割にもなっています。昨今のエネルギー資源の価格高騰の影響から逃れられない状況にあるのです。

 電気料金値上がりのもう一つの要因は、再エネの普及を後押しすることを目的に施行された全量固定買取制度(FIT)です。この制度により、再エネによって発電された電気を、地域の大手電力会社が固定の価格で買い取ることが義務付けられました。

 火力発電や原子力発電と比較し、再エネはコストが高かったので、再エネ事業者に対し金銭的な援助が必要とされました。そこで消費者が、火力や原子力など他の電源と再エネとの価格差を「賦課金」として、通常の電気料金に加えて支払うことになったのです。2022年時点で、賦課金は一般世帯で年間1万円を超える負担になっています。

斜面に設置された太陽光パネル。FITにともなう付加金も電力料金値上がりの一因(写真:アフロ)

──再エネは燃料が不要でCO2の排出もないことから、良いイメージを持つ人も多いかと思いますが、再エネに対しては、様々な課題が指摘されています。電気料金高騰以外に、どのような問題や課題があるのでしょうか。

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