「子どもが大切」と叫ぶ割に、ひとり親を大切にしない日本(写真:アフロ)

 映画や文学作品において、「女性の登場人物がどんな扱いを受けているか」という視点で作品を見る男性オーディエンスはなかなかいない。だから、物語の中で女性がどう扱われ、そこに男のどんな深層心理が潜んでいるかと問うてみると、驚くほどたくさんの怖ろしい発見がある。

 果たして、男は女に何を期待し、何を諦めさせようとしてきたのか。そして、言うことを聞かない強い女をどう葬ってきたのか。『新版 ヒロインは、なぜ殺されるのか』(KADOKAWA)を上梓した女性学研究家の田嶋陽子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──本書は、1991年に『フィルムの中の女 ヒロインはなぜ殺されるのか』というタイトルで新水社から出版され、その後、1997年に講談社+α文庫で復刊され、この度、新たにKADOKAWAから『新版 ヒロインは、なぜ殺されるのか』というタイトルで復刊されました。最初にこの本を書かれた時、田嶋さんはどのような状況で、どんな思いでこの本をお書きになったのでしょうか。

田嶋陽子氏(以下、田嶋):この本は児童書籍専門店「クレヨンハウス」で私が行った講義の内容をまとめた本です。新水社の社長は「そのまま出したい」と言ってくれましたが、私は書き足したいことがいろいろありました。ちょうど『森田一義アワー 笑っていいとも!』(1982年-2014年 フジテレビ)や『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)などへの出演が決まり、慌ただしい状況の中で書いた本です。

 この本が出た90年代前半は、女性の社会進出に関して、今よりも活気づいていた印象があります。当時、女性はまだ社会では活躍できておらず、私の会に話を聞きに来る女性たちは専業主婦が多かった。働いている女性もたくさん来ましたが、みな職場で十分な扱いを受けていませんでした。

 専業主婦の人たちは、「女の生き方は立派な専業主婦になることだ」と言われてきたけれど、実際にやってみると自由はないし何かヘンだと感じていた。「男が一級市民で女は二級市民扱いだ」という意識を持ち始め、これでいいのかと悩み始めた時期だったと思います。そういう時に、私はいろんなところに呼ばれて話をしました。この本の元になった講義もその一つだったと思います。

──田嶋さんは女性学がご専門ですが、どうしてそういった研究をされるようになったのですか?