5.トクマクを攻撃する戦略的価値

 トクマクあるいはトクマクを含む東西の線(以下トクマク)までの戦いは、ウクライナでの戦争の最大の山場(死命を制する戦い)と言える。

 なぜなら、トクマクの価値を軍事的に捉えれば、両軍にとってこの都市を有するか失うかで、ザポリージャ州、ヘルソン州、クリミア半島を獲得するか、失うかどうかの分水嶺となるからである。

 その理由について考えるとどうなのか。

 ウクライナ軍がトクマクを占領すれば、ロシア軍の主要な陣地(第2・3線防御陣地)を突破したことになる。

 そして、さらに進めばアゾフ海に近いメリトポリ奪回の足掛かりになり、メリトポリおよびM14 道路への砲撃も可能となる。

 結果的に、メリトポリは安全な都市ではなくなるし、2州およびクリミア半島とロシア領域をつなぐ東西に走るM14道路が使えなくなる。

 ロシアは、これら3州への進出と撤退が不可能になる。補給路や撤退路が安全に機能しなくなり、3州が孤立することになる。

トクマクからヤゾフ海に達する分断作戦

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイトでお読みください)

 孤立したロシア軍は、ウクライナ軍から攻撃を受ければ撤退はできず、戦闘のための弾薬の補給も受けられない。

 また、負傷者は救済を受けられず、医療品も補給してもらえなくなる。

 時間が経過すれば、いずれザポリージャ州とへルソン州の2州、戦闘展開が上手くいけばクリミアまで、ウクライナに占領されることになる。

 大量の兵士も捕虜になるだろう。ロシアに完全な敗北感が漂うことになる。

 反対に、ロシア軍がトクマクの占領を維持すれば、この3州の占領の維持が可能になる。

 したがって、ウクライナ軍がこの地を占領できなければ、損害も多く被り、その後の奪回作戦も不可能になる。