3.ロボディネへの突破作戦が成功

 今、両軍の攻防が動き出したのは、ウクライナ軍がロシア軍の固い陣地に攻撃を仕掛け、一部の地域で突破口を開けたからである。

 ロシア軍は、半年以上もかけて作った陣地で必死に守ろうとした。しかし、ウクライナ軍は、その固い陣地を突き破ったのである。

 6月、ウクライナ軍は東部と南部戦線で攻勢を仕掛け、戦闘の経過とともに、オリヒウからロボティネの攻撃軸に戦闘力を集中して戦った。

 8月下旬、ザポリージャ州のロボティネを奪還した。

 第1線防御陣地に楔を打ち込み、大きくはないが突破口が開いたということだ。これは、両軍が睨み合う約700キロという広大な正面のほんの一部である。

 一部ではあるが、防御陣地の表面から内部まで、3枚のうちの1枚に穴を開けたことになる。

 3枚の内の1枚といえども、60%の準備と戦力を集中した陣地(ウクライナ軍ダブリア作戦戦略グループ司令官の評価)であり、極めて固い陣地である。

 ここを突き破れば、その後の戦闘は、3か月もかかることはないだろう。

オリヒウからロボティネの戦いでの占拠地域(6月から9月7日まで)

〇で囲った青い部分(出典:米国戦争研究所)

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイトでお読みください)

 ロシア軍の固い陣地というのは、その防御線を守るために主力の部隊も投入し、地雷などの障害を大量につぎ込んでいる。

 ロシア軍はウクライナ軍との戦闘において、突破されたならば、機動打撃によって何度も奪回を試みたほどである。

 第2線や第3線の陣地で強く抵抗するのであれば、第1線陣地で損失が多く出る機動打撃を何度も実行することはないはずだ。

 この地を守りたいために、あるいはこれ以上の陣地を失いたくないために戦ってきた。

 ロシア軍は、その最も固い殻を破られたのである。

 ロシア軍首脳部は、かなり危機感を持ち、焦っていることだろう。