攻撃を受けるウクライナ軍の戦車(ビデオ画像:Russian Defense Ministry Press Service/AP/アフロ)

反転攻勢も数がまったく足りていない「戦車・装甲車」

 ロシアによるウクライナ侵略戦争は勃発から1年半が経過し、ウクライナ軍の大規模な反転攻勢もいよいよ始まった。

 ウクライナ軍はロシア軍の強固な防御線に四苦八苦するものの、8月下旬にウクライナ南部のザポリージャ付近で第1防御線を突破、米高官も「顕著な進展だ」と賞賛し、さらなる前進に期待を寄せる。

 だが心配なのが長期戦・消耗戦による「兵器不足」で、ウクライナのゼレンスキー大統領も事あるごとに「もっと武器・弾薬を」と、支援に回る西側諸国に訴えている。

 中でも数がまったく足りていない様子なのが、戦車や装甲車などのAFV(装甲戦闘車両)だ。そもそも戦争に即応する陸軍を急激に増強したため、各部隊にAFVを十分に配属できていないという事情がある。

 加えて空軍力が弱く航空優勢(制空権)が握れないため、ロシアの戦闘機や攻撃ヘリコプター、ドローンなどの攻撃で予想以上に損失しているのも大きな原因だ。

 ウクライナを支援する西側も続々とAFVを送りたいのだが、冷戦終結で戦車・装甲車の生産ラインを大幅縮小、もしくは中止したうえ、自国軍の保有数にも大ナタを振るった結果、まとまった数をすぐさま提供できないでいる。

 世界最大の兵器生産国であるアメリカですら、現在戦車を1台も造っていない。アメリカ陸軍は現在、M1戦車を約2600台実戦配備するほか、2000台以上を在庫として保管。必要に応じてこれを蔵出しし、整備・改修を施した後に、自国用や輸出に回している状況だ。

 イギリスやフランス、イタリアなども状況は同じで、わずかにドイツがレオパルト2戦車を年産50台ほど製造する程度である。

 要するに世界屈指の先進工業国が軒を連ねる西側であっても、戦車・装甲車をすぐさま量産できず、これまでお蔵入りしてきた余剰の“中古車”を放出して、とりあえず急場を凌いでいるのである。