(英エコノミスト誌 2023年9月2日号)

ドローンの操縦訓練中のウクライナ兵(8月17日、写真:ロイター/アフロ)

新型ドローンがロシア領内の奥深くを攻撃しているが、規模の拡大は容易でない。

 8月25日早朝。ドローン(無人機)開発者の一団がロシアの支配地域の上空を飛ぶこれまでで最も大胆な部類に入る任務に臨むためにウクライナ南部の打ち上げ地点に向かった。

 クリミア半島の奥にある軍事基地に対する攻撃だ。

 関係者はテスト飛行と称しており、ドローン群を成す試作品の多くは実験段階のものだった。だが、その一部はしっかり任務を果たした。

急増するロシア領への攻撃

 軍事基地ではいくつか爆発が生じ、数人が死亡した。現地の情報筋によれば、負傷した兵士たちが次々と現地の病院に運ばれた。

 クレムリンにとっては惨めな1週間の締めくくりとなった。

 この週には、10機を超えるドローンがモスクワの中心部を攻撃したこと、主要な空港が繰り返し閉鎖されたこと、兵器工場や軍用飛行場、燃料貯蔵庫、鉄道で原因不明の爆発があったことなどの説明に四苦八苦していたからだ。

 8月30日には、ウクライナがこれまでで最も大規模と思われるドローン攻撃をロシア領に行った。

 攻撃対象は6地域に上った。西部の都市プスコフでは複数のドローンが空港を攻撃し、輸送機4機に損害を与えたと伝えられる。

 クリミアでの作戦に使われた試作機の一つである「モローク(邪悪な霊の意)」の開発チームに近い筋は、ウクライナが空からの攻撃能力を新たに整備できたのは「何カ月も前にまいた種」のおかげだと話す。

 モロークの開発の道のりは「奇跡的」だった。

 ロシアとの国境からほんの数キロしか離れていない場所でリスクのある試験発射を行った時には、ロシアからのロケット攻撃をほんの数分の差で免れた。

 現在は、連続生産のステップアップを目指している。