(英エコノミスト誌 2023年8月26日号)

日米豪インド海軍の共同訓練のためにシドニー港に入る米海軍のドック型揚陸艦「グリーン・ベイ」(8月11日、米海軍のサイトより)

インド太平洋での超大国の対立によるコストを被る覚悟が、オーストラリアの有権者にはあるのか?

 大日本帝国の軍隊が破竹の勢いで迫ってきた1941年、オーストラリアの当時の首相ジョン・カーティンはやむにやまれず方向転換した。

 旧宗主国への忠誠の最後の絆を断ち切り、次のような請願を行った。

「オーストラリアは米国を頼りにする。英国との昔からのつながりや血縁関係にかかわる呵責は全くない」

深まる米豪のメイトシップ

 最近、オーストラリアと米国は再び、お互いをかなり頼りにしている。

 中国に対抗するためだ。

 両国の「メイトシップ(友情)」は、ダグラス・マッカーサーがブリスベンから連合軍を指揮した時以来の大規模な刷新過程に入っている。

 オーストラリアは米軍の部隊をもっと受け入れられるように基地を改修し、中国を脅かすことができる武器を導入している。

 両国による合同軍事演習も増えている。

 その悲劇的な副作用として、8月27日に米国の海兵隊員3人がオーストラリア北部でのヘリコプター墜落事故で死亡した。7月にはオーストラリア人4人が同じような事故で命を落とした。

 オーストラリアは米国がインド太平洋地域に目的を限定した安全保障協定を格子状に張りめぐらす作業も手伝っている。

 アントニー・ブリンケン米国務長官はオーストラリアを先日訪問した際、「米国にとってオーストラリア以上に重要な友人、重要なパートナー、重要な同盟国は存在しない」と述べた。

 お世辞ではなく、本心だった。

 もし米国が中国と戦争することになれば、一緒に戦う可能性が最も高い同盟国はオーストラリアだろうと米国政府高官は述べている。

 だが、オーストラリア国内では、安全保障にこれまでより積極的な姿勢を取ることのリスクとコストをめぐり、いくらか不安感も生じている。