(英エコノミスト誌 2023年8月12日号)
サプライチェーンはますます複雑で不透明になっている。
米国のジョー・バイデン大統領が8月9日、中国との経済戦争に用いる最新兵器を披露した。
新しいルールは民間セクターによる外国での投資を規制し、機密性が最も高い技術への投資を中国で行うことを禁止する。
資本主義の世界最大の擁護者である米国がこのような抑制策を採用することは、ますますけんか腰で威嚇的になっているライバルの台頭に立ち向かうなかで、この国の経済政策に重大な変化が生じていることの新たなしるしだ。
貿易と資本のグローバル化に異変
米国は何十年もの間、貿易と資本のグローバル化を支援してきた。おかげで効率の向上と消費者のコスト低減の観点で大きな恩恵がもたらされた。
だが、何かと物騒な世界においては、もはや効率だけでは不十分だ。
米国では、そして西側諸国においても、中国の台頭を受けてほかの目的が重要さを増している。
無理もないことだが、政府当局は、軍事力を増強するような最先端技術に対する中国のアクセスを制限することで国家安全保障を確保したい、そして中国が非常に強力な支配を続けている分野で既存のサプライチェーン(供給網)に代わるものを構築したいと考えている。
その結果が中国を標的にした関税や投資規制、輸出規制の数々だった。
先鞭を付けたのはドナルド・トランプ前大統領で、バイデン氏がその方針を引き継いでいる。
ジャネット・イエレン米財務長官は先日、インド・デリーとベトナム・ハノイを訪問し、友好国でサプライチェーンを構築し直す「フレンドショアリング」の利点を売り込んだ。
企業経営者には、中国から離れた方が賢明だとシグナルを送った。
このような「デリスキング(リスク低減)」は効率を低下させるだろうが、機密性の高い製品に対象を限ればダメージも限定される、それに米国がより安全になるのだから、コストが多少かかってもそれだけの価値はある、というわけだ。