(英エコノミスト誌 2023年7月29日号)
米国の経済戦争への報復について、中国共産党が以前ほど臆病でなくなってきた。
中国と米国の貿易戦争がヒートアップしていた2019年、中国共産党の機関紙「人民日報」は、レアアース(現代の大半のハードウエアの製造に欠かせない鉱物)を中国が独占していることが米国に反撃する道具の一つになると予想した。
「そんな警告はなかったとは言わせない」と書いた。
何年もの間、このセリフはこけおどしにすぎなかった。豊かな国々が主に加盟する経済協力開発機構(OECD)によれば、2009年から2020年にかけて、中国による輸出規制の法律の数は9倍に膨れ上がった。
ただし、規制は十分な吟味を経て制定されたものではなく、略式で、対象も狭かった。戦略的な攻撃というよりは、手当たり次第に銃口を向けて行う警告射撃だった。
「法による国際闘争」の号砲
西側の半導体メーカーが中国の顧客に最先端の半導体や半導体製造装置を販売できないようにする策など、米国が中国への制裁を少しずつ強化するにつれ、中国政府も新たな対抗策を次から次へと繰り出してきている。
7月には半導体などの先進技術で使われる2種類の金属について新たに輸出規制を導入し、商務省の元高官からは、これは中国の報復の「始まりにすぎない」との発言も飛び出した。
7月20日には中国の新しい駐米大使、謝鋒氏が、テクノロジーをめぐる戦争がエスカレートするなかで中国が「黙っているわけにはいかない」と述べ、近々対応することをほのめかした。
今回はかなり意図的に立てられた策のように見える。
テクノロジーに対する中国の野心を封じ込めようとする米国の取り組みに対抗すべく、最高権力者の習近平国家主席は「法による国際闘争」なるもので西側からの威圧に反撃せよと規制当局に命じた。
その結果として最近、米国の商業戦争にさらに強く対応できる枠組みを作る法律が矢継ぎ早に打ち出されている。