(英エコノミスト電子版 2023年8月3日付)

2024年は民主主義の根幹を揺るがす選挙が行われる可能性がある

 ドナルド・トランプ氏の悪事を告発した書類をすべて保存しようとすれば、米国議会図書館を増築する必要が出てくるだろう。

 まず、大統領になる前に生じた疑惑があり、訴えのなかには誤りもあった。次に、ホワイトハウスにいた4年間での嫌疑があり、その結果2件の弾劾が行われるに至った。

 そして大統領退任後、トランプ氏は刑事事件で起訴される最初の大統領経験者になった。

 まず、事業記録の改ざんなどをめぐるマンハッタンの事件があり、政府機密文書の取り扱いをめぐるマール・ア・ラーゴの事件があった。

 そして、米大統領選挙のジョージア州での結果を覆そうとした同州フルトン郡での事件も近く起訴に至る可能性がある。

 それから、トランプ氏から性的暴行を受けたという女性との名誉毀損をめぐる裁判で、同氏が敗れたことを思い出す読者もいるかもしれない。

 ジャック・スミス特別検察官が8月1日に行った今回の起訴は、上記の事件とは比べものにならないほど重大だ。

 起訴状が正しいことが証明されれば、トランプ氏はこの一件で記憶されることになる。

 リンカーンは奴隷を解放した、レーガンは冷戦に勝利した、そしてトランプは選挙を盗もうとして刑務所に送られた、という具合にだ。

国によっては反逆罪と呼ばれる政治犯罪

 今回の起訴の容疑は、民主主義の下で犯すことが可能な最も深刻な政治犯罪だ。

 起訴状で詳述された嫌疑は、不正な選挙だという自分の主張が嘘だと分かっていながら2020年の選挙結果を覆そうと企てたということだ。

 証拠の捏造、政府職員への強要、そして選挙結果を認定する憲法上の手続きを妨害する試みは、米国とその有権者に対する共謀に相当する。

 一部の国では、これは反逆罪と呼ばれる。