7月26日、ロシアによる攻撃で負傷したウクライナ軍の兵士の手当てをする衛生兵たち(写真:ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

米紙「ウクライナ軍はクリミアの玄関口メリトポリに到達できない」

[ロンドン発]キーウを訪れたアントニー・ブリンケン米国務長官は6日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談、M142 高機動ロケット砲システム(HIMARS)、人道的地雷除去支援など総額約10億8000万ドル(約1600億円)の追加支援を表明した。昨年2月のロシア侵攻以来、米国の支援は軍事分野だけで432億ドル(約6兆4000億円)にものぼる。

 6月4日に始まった反攻は1日に140~240メートルしか進まない(英シンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)」)。このため米紙ワシントン・ポスト(8月17日付電子版)は米情報機関の評価としてウクライナ軍はロシア軍の地雷原に阻まれ、クリミア半島の玄関口である南東部の要衝メリトポリに到達できないと伝え、波紋を広げた。

 ウクライナ軍は南部ザポリージャ州ロボティネ村から80キロメートル以上南のメリトポリを目指す。しかし米政府高官は同紙に「メリトポリから数キロメートル離れたところまでしか進軍できない」と述べたという。米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は以前から「反攻は長く、血なまぐさく、時間がかかる」との見方を示している。

 満を持して反攻が始まった際、ウクライナ軍は米軍M2ブラッドレー歩兵戦闘車、ドイツ製第3世代主力戦車レオパルド2など西側の装備と訓練を整えていたにもかかわらず、ロシア軍が敷き詰めた地雷原で立ち往生し、装備の20%を失った。ウクライナ軍は人的損失を最小限に抑えるため、米軍が望む大規模な電撃戦から小規模な部隊による作戦に切り替えた。

9月6日、ウクライナのザポリージャ地方の最前線で、M2ブラッドレー歩兵戦闘車に乗り込み反攻の準備する第47独立機械化旅団のウクライナ軍人。西側諸国供与の装備が配備されている第47独立機械化旅団は、ロシア軍から最も戦闘能力の高い部隊と恐れられている(写真:ロイター/アフロ)