仙台育英を破って107年ぶり2度目の優勝を果たし、喜ぶ慶應ナイン(写真:共同通信社)

夏の甲子園を席巻した慶應フィーバー

 この夏の甲子園を沸かせた高校野球の「慶應」フィーバー。多くの人たちが、それぞれの立場から、何かしらの思いを抱きながら、それを眺めていたのではないだろうか。

 わたしにとって、慶應の優勝は素直にうれしいものだった。父の仕事の都合で日米で三つの高校に通うこととなったわたしには、高校野球の文脈での「地元」もなければ、「母校」すらない。

 新聞記者時代に取材した兵庫代表の社高校や、出生地かつ現在暮らす広島の代表である広陵高校、そして、大学OGという中途半端なつながりから、慶應義塾高校。ちょっとずつ自分と関わり合いのあるいくつかの高校に注目しつつ、酷暑のこの夏、いつも以上に屋内にこもって高校野球を観戦した。

 決勝で慶應を応援したのは、大学時代に所属していたバスケサークルの練習場が慶應義塾普通部(中学校)の体育館だったこと、そして、単純に「応援しやすい」ことだった。

 大学野球と応援が同じなので、ほぼ毎年早慶戦を観戦していたわたしにもなじみがあり、伝統の応援歌である「若き血」も「慶應義塾塾歌」も身についている。準決勝や決勝は、甲子園のアルプスや全国各地にいる、仲間たちとLINEのチャットでヤイヤイやり取りをしながら観戦した。