藤浪晋太郎投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 率直に言って、まだ疑問符は拭えないが、わずかながら再生への道は残されている。オークランド・アスレチックスに所属する藤浪晋太郎投手のことだ。

初勝利で初のビールかけを経験

 現地時間5月14日、本拠地のアラメダ・カウンティ・コロシアムで行われたテキサス・レンジャーズ戦で藤浪は2試合連続で登板がなかった。チームは3―3の同点で迎えた8回にリリーフ陣が満塁弾を浴びるなど大量8得点を奪われ、3―11で大敗。2連敗で借金は絶望的な24にまで膨らみ、ブルペンに待機していた藤浪は出番がないまま屈辱のゲームセットを迎えた。

 ただ2日前の5月12日、同じ本拠地で行われたレンジャーズ戦では至福の時を味わった。10回一死一、二塁から7番手として登板。この試合のマウンドでは「タナボタ」とはいえ、メジャー初勝利を手にしたのである。

 2点を勝ち越された直後から、なおも得点圏に走者を背負う厳しい場面でのスイッチとなったが、この日4号ソロを放つなどマルチ安打をマークしていた2番ロビー・グロズマンを4球目の95.8マイル(約154.17キロ)のフォーシームでまず見逃し三振を奪った。続く3番ネート・ローには2球で追い込みながらもフルカウントまで粘られた末、7球目の内角低目にバウンドして外れたカットボールを見切られて四球。フルベースとなったものの冷静さは失わず次の4番ジョシュ・ヤンを2球目に投じた96.3マイルのフォーシームで簡単に追い込み、最後は3球目の外角低めカットボールを打たせて右直に仕留めた。

 そして、その裏だ。タイブレーク形式となる延長戦で先頭打者から2連打が飛び出し、1点差に迫った無死一、三塁で3番ブレント・ルーカーが右中間へア・リーグトップに並ぶ11号逆転サヨナラ3ラン。劇的な幕切れでダイヤモンドを一周し、ホームに還ってきたルーカーを藤浪も満面の笑みを浮かべながらチームメートとともに手洗い祝福で出迎えた。自らにも記念すべきMLB初勝利が転がり込んできただけに、レギュラーシーズンが開幕して以降ここまで見せたことがないような喜びを爆発させた。