メジャーシーンのスターダムへ
1994年3月にリリースされたメジャー1枚目となるアルバム『迷える百合達~Romance of Scarlet~』。東芝EMIから佐久間正英プロデュースによって制作された。この組み合わせは、BOØWYを想起させる。メジャーデビューシングル「for dear」のノリの良いビートとキャッチーさは、確かにビートロック系譜を感じさせるものだった。
しかしながらエッジィなナンバー「棘」、奈落へと落とされる「masochist organ」、混沌とした狂気が暴発する「autism -自閉症-」など、ダークでハードな路線は変わっていない。むしろ、内省的で孤高な美学が名プロデューサーの手によって、一気に外へと解放されたと言っていいだろう。インディーズ時代はあまりにも悲痛でアンダーグラウンドすぎる世界観ゆえ、バンドの大きな魅力であるメロディアスな部分が伝わりづらいものになっていたことも否めない。それがバンドの本質はそのままに、より洗練されたものとして明確になったのが本作である。
続く『Cruel』(1994年8月)、『feminism』(1995年5月)の流れは、インディーズのヴィジュアル系バンドがメジャーでどう洗練されていくのか、それをリアルに感じたものである。『feminism』のレコーディング中に臣の脱退という大きなアクシデントに見舞われるものの、カジュアルで中性的な清春のジャケットが表すかのように聴きやすい作品に仕上がっている。メジャーにおけるポップス色を強めた黒夢のひとつの到達点がこの『feminism』だろう。結果として、初のオリコンアルバムチャート1位を獲得する。
カラフルでファッショナブルな出たちでテレビ番組に多く出演するようになった清春、インディーズ時代から大きく変化した路線に戸惑いを感じたファンも多かったが、バンドとしての音楽とクオリティは確実に上がっていったのである。
5枚目のシングル「BEAMS」(1995年)は、自ら出演したCMタイアップもあって、大きなヒットを生む。7枚目のシングル「ピストル」(1996年4月)がMTV Video Music Awards視聴者賞日本部門を受賞し、人気を不動なものとした。メインストリームにおけるスターダムに上り詰めたのだ。