最強のライブバンドとして

 そして、活動休止前ラストとなったアルバムが『CORKSCREW』(1998年)である。音楽もサウンドももっとも激しく、最も万人受けしないであろうアルバムが黒夢でいちばん売れたアルバムというのだから、どれだけ彼らの影響力が大きかったことか。

黒夢「Masturbating Smile」(1998年)

 当時はデジタルレコーディングが普及し始めた時代でもあり、海外のオルタナティヴロックの台頭は日本のロックシーンを大きく変えていた。我が国ではモダンヘヴィネスやミクスチャーロックと呼ばれた、ニューメタルやインダストリアルといった最先端の音を取り入れたアーティストが多くいた時代だ。シーンで見れば、BUCK-TICKやhideはその筆頭であろう。その中で、黒夢は前作『Drug TReatment』で確立したパンク路線をさらに極め、極限まで削ぎ落としたシンプルなバンドサウンドに徹したパンクアルバムを完成させたのだ。

 全14曲約44分。シングル曲を除けばどの楽曲も2分~3分程度。バラードなどなく、シーケンスやシンセといったデジタル要素も一切なし。シンプルなバンドアレンジとスピード感で一気に駆け抜けていく作品だ。清春とベースの人時の関係があまりよくなかったことも、本作の緊張感となっているのかもしれない。

 本作を引っ提げ、1998年6月から1999年1月にかけての全国ツアー『KUROYUME TOUR “Many SEX Years” Vol.5/CORKSCREW A GO GO!』は7ヶ月で100会場、全112公演を行っている。誰もが認めるライブバンドだ。その激しさゆえにライブが中断することもあった。

 そして、ツアーファイナルの1999年1月29日に無期限活動停止を発表した。

 ダークなヴィジュアル系、メジャーでの洗練されたポップロック、そして激しくソリッドなストリートパンク……、目まぐるしいほどの進化を遂げながらもどれにおいてもトップを獲ってきた。初期を除けばほとんどの活動期間をギタリスト不在ながらもアグレッシヴにロックをかき鳴らし、バンドであり続けた黒夢。そのフロントマンである清春は今も変わらず、色気たっぷりのロックスターとして我々を魅了し続けている。