全国の野球活動をとりまとめる組織は存在しない!
小林:世界的に見ても、野球のやり方はリーグ戦が主流です。
ただ、甲子園のように多くのチームの中から1チームの優勝者を決めるためには、トーナメントが手っ取り早いのだと思います。
玉木:先ほど申し上げたように、トーナメントでは負けたら終わりです。
そうなると、勝てる戦術しか使わない。強豪校には、多くの素晴らしい選手がいますが、勝てる選手しか使わない。多様な戦術や様々な選手のプレーが表現されることもスポーツの醍醐味で、面白いところですが、トーナメントにより、その面白さが失われてしまっている。
もう30年近く前の話ですが、元プロサッカー選手のセルジオ越後さんに、甲子園について聞かれたことがあります。「なぜ応援団の中にユニフォームを着た選手がたくさんいるんだ?」「なぜ選手なのに試合に出ないのか?」「補欠って何?」
私は、はじめは何を聞かれているのか理解できませんでした。100人以上の部員がいる強豪校であれば、ベンチ入りできなかった選手は応援に回る。これが当然だと思っていたのです。
セルジオ越後さんは「選手には試合をやらせるべきだ」と仰っていました。ベンチ入りできない選手をレベル別に分けて、Aチーム、Bチームを作って試合をさせればいいじゃないか、と。
──セルジオ越後さんのお話があったので、サッカーと野球の組織の違いについて、お話を伺えればと思います。
小林:サッカーと野球では、組織の作り方が全く異なります。
サッカーは、日本サッカー協会の傘の下ですべての活動が行われています。Jリーグを設立するときに、ヨーロッパのサッカー組織を手本にしたのです。Jリーグ、なでしこリーグ、全国高等学校サッカー選手権大会はもちろんのこと、少年サッカークラブの運営まで、すべて日本サッカー協会が統括しています。
一方で、2023年現在、日本全国の野球活動をとりまとめる組織は、存在しません。
玉木:日本の野球組織を理解するには、日本の野球史を振り返るとわかりやすいと思います。